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信じられなかった。信じてなるものか。ハリーは何度もシリウスを呼びました。叫びもしました。絶叫しました。しかしシリウスがベールの向こう側から戻って来る事はありませんでした。(全3項目)

3-1.ベールの彼方へ
5人が駆け込んで来たのを見てルシウス・マルフォイ氏が向きを変え杖を上げました。しかしトンクスがもうルシウス氏に「失神光線」を放っていました。死喰い人たちは出現した騎士団の面々に完全に気を取られていました。

それ以降は敵味方が入り乱れての激しい戦闘になりました。ハリーの足が何か丸くて固い物に触れハリーは滑りました。一瞬ハリーは予言球を落としたと思いました。がそれは床を転がって行くムーディの魔法の目だったのです。

ムーディは頭から血を流して倒れていました。ムーディを倒した死喰い人がハリーとネビルに襲いかかって来ました。アントニン・ドロホフでした。ドロホフはネビルに杖を向けてこう唱えました。するとネビルの足が・・・

「タラントアレグラ!踊れ!」

たちまち熱狂的なタップダンスを始めネビルは体の平衡を崩して床に倒れました。この魔法がとんでもない惨事を引き起こす事になってしまったのです。ダンスを踊るネビルの足が予言球を蹴ってしまい球は落ちて砕けました。

ハリーとネビルは愕然として予言球の割れる所を見ていました。目だけが極端に拡大された真珠のように半透明な姿が立ち昇りました。気づいているのは2人だけでした。しかし周囲の喧騒で予言は一言も聞き取れませんでした。

するとそこにダンブルドアが現れてハリーもネビルも心底ホッとしました。2人の一番近くにいた死喰い人がダンブルドアに気づいて叫んで仲間に知らせました。ただし一組だけはダンブルドアの登場に気づかないようでした。

「さあ来い。今度はもう少し上手くやってくれ!」

ベラトリックスの赤い閃光をかわしてシリウスがこう叫びました。しかし二番目の閃光はシリウスの胸に真っ直ぐ当たりました。シリウスの顔からは笑いが消えてはいませんでした。がその目は衝撃で大きく見開かれていました。

ハリーは無意識にネビルを放しました。杖を引き抜き階段を飛び下りました。シリウスが倒れるまでに永遠の時が流れたかのようでした。シリウスの体は優雅な弧を描いてアーチに掛かっている古ぼけたベールを突き抜け・・・

仰向けに沈んで行ったのでした。

3-2.呼べども呼べども
かつてはあんなにハンサムだった名付け親のやつれ果てた顔が恐れと驚きの入り交じった表情を浮かべて、古びたアーチをくぐりベールの彼方へと消えて行くのをハリーは見ました。ベールは一瞬強い風に吹かれたように・・・

はためくと元通りになりました。ハリーはベラトリックス・レストレンジの勝ち誇った叫びを聞きました。しかしそれは何の意味もない。自分には判っている。シリウスはただアーチの向こうに倒れただけですぐ戻って来るんだ。

「シリウス!シリウス!」

しかしいくら待ってもシリウスは出て来ませんでした。激しく喘ぎながらハリーは階段下に立っていました。シリウスはあのベールのすぐ裏にいるに違いない。僕が引き戻す。ところがハリーが台座に向かって駆け出すと・・・

「ハリー、もう君にはどうする事もできない」
「連れ戻して。助けて。向こう側に行っただけじゃないか!」
「-もう遅いんだ、ハリー」
「今ならまだ届くよ」

「もうどうする事もできないんだ。ハリー・・・どうする事も・・・あいつは行ってしまった」

ハリーは激しくもがきました。しかしルーピンはハリーの腕を決して放そうとはしませんでした。ありったけの力でハリーはルーピンに抵抗しました。ルーピンは分かってない。シリウスはただ見えない所に隠れているだけだ。

「シリウス!シリウス!」

信じられなかった。信じてなるものか。ハリーは絶叫しました。何とかしてハリーを抑えようとしながらもルーピンも涙声になりました。しかしルーピンが言った次の言葉はハリーには到底受け入れる事ができなかったのでした。

「あいつは戻れない。だってあいつは-死」
「シリウスは-死んでなんか-いない!」

嘘はやめて欲しい。シリウスはあの古ぼけたベールの裏に立っているのに。今にもそこから現れるのに。黒髪を後ろに振り払い意気揚々と戦いに戻ろうとするのに。そうじゃないふりをするのはやめて欲しい。ところが・・・

ルーピンはハリーを台座から引き離しました。ハリーはアーチを見つめたまま今度はシリウスに腹を立てていました。こんなに待たせるなんて。しかしルーピンを振り解こうともがきながらハリーは心のどこかで判っていました。

シリウスは今まで自分を待たせた事なんてなかった。どんな危険を冒しても必ず会いに来た。助けに来た。ハリーが命を懸けてこんなにシリウスを呼んでいるのに、それでもシリウスが姿を現さないのなら理由は1つしかない。

ハリーはルーピンを振り払ってシリウスをベールの向こう側に追いやったベラトリックス・レストレンジに挑みかかりました。がしかし到底ハリーの敵う相手ではありませんでした。結局ベラトリックス・レストレンジは・・・

魔法省に現れたヴォルデモート卿と共に逃走して行ったのでした。

3-3.学期最終日に
学期最後の日の夜が来て大多数の生徒は荷造りを終え宴会に向かっていました。がハリーは荷造りに取りかかってもいませんでした。しかしロンが寝室の扉を閉めて出て行った後もハリーは荷造りを急ごうともしませんでした。

それは「学年度末さよならパーティ」に出るのが嫌だったからです。去年もその話をしたのだからダンブルドアが挨拶をする時にはヴォルデモートの事もそして自分の事も触れるに違いない。だから出席したくなかったのです。

ハリーはトランクの一番底からくしゃくしゃになったローブを引っ張り出し畳んだローブと入れ替えようとしました。するとトランクの隅に乱雑に包まれた何かが転がっているのに気づきました。一体何なのか見当もつきません。

取り出してみるとたちまちそれが何なのかを思い出しました。クリスマス休暇を終えハリーがグリモールド・プレイス12番地を離れる時にシリウスが「私を必要とする時には使いなさい」と言ってハリーに渡した物だったのです。

ハリーはベッドに座り込み包みを開きました。小さな四角い鏡が出て来ました。かなり古そうで汚れてもいました。鏡を裏返してみるとそこにはシリウスの走り書きがありました。そこにはその鏡の使い方が記されていたのでした。

「これは両面鏡だ。私が対の鏡の片方を持っている。私と話す必要があれば鏡に向かって私の名前を呼べばいい。私の鏡には君が映り私は君の鏡の中から話す事ができる。ジェームズと私が別々に罰則を受けていた時よくこの鏡を使ったものだ」

ハリーは心臓がドキドキして来ました。シリウスとまた話せる。今すぐに。きっとそうだ。ハリーはあたりを見回して誰もいない事を確かめました。そして震える両手で鏡を顔の前にかざして大きくはっきりと呼んだのでした。

「シリウス」

息で鏡が曇りました。ハリーは鏡をより近づけました。興奮が体中を駆け巡りました。しかし曇った鏡に写っているのはハリー自身の顔でした。ハリーはもう1度鏡を拭い一語一語が部屋にはっきりと響き渡るように叫びました。

「シリウス・ブラック!」

何事も起りませんでした。あのアーチを通って行った時シリウスは鏡を持っていなかったんだ。ハリーはそう思いました。ところが両面鏡をトランクにぶち込んだ後に1つの考えが閃きました。ハリーは寝室を飛び出しました。

「おーい-おいニック!ニック!」

ハリーが「訊きたい事がある」と言った時グリフィンドール塔付きのゴースト「ほとんど首なしニック」の顔には、えも言われぬ奇妙な表情が浮かびました。当惑した顔で「宴会の後まで待てませんか?」と言うニックに・・・

ハリーは「待てない。どうしても君と話したい」と言ったのでした。ニックは諦めたような顔をしました。ニックはハリーがこうやって自分を訪ねて来る事をどうやら予想していたようでした。それはニックが言うには・・・

「時々ある事です。誰かが哀悼している時」

いざニックを目の前にするとハリーは思ったよりずっと言い出しにくい事に気づきました。つまり君は死んでる。でも君はここにいる。僕は君と話してる。君はホグワーツを歩き回る事ができる。するとニックはハリーに・・・

「あの人は帰って来ないでしょう」

ニックは確かに魔法使いはゴーストとして帰って来る事ができる。地上に自らの痕跡を残して行く事ができる。生きていた自分がかつて辿った所を影の薄い姿で歩く事ができます。しかしその道を選ぶ人は滅多にいないそうです。

ニックが出て行った後1人残されたハリーは再び名付け親を失ったようなそんな気持ちになったのでした。惨めな気持ちで人のいない城を足取りも重く引き返しているとハリーの前に現れたのはルーナ・ラブグッドその人でした。

「アーチのあるあの部屋だよ。みんな見えない所に隠れているだけなんだ。それだけだよ。あんたには聞えたんだ」

2人は顔を見合わせました。ルーナはちょっと微笑んでいました。ハリーは何と言って良いのか?どう考えていいのか分りませんでした。ルーナはとんでもない事を色々信じてる。しかし歩いて行くルーナの後ろ姿を見て・・・

ハリーは胃袋に重くのしかかっていた物が少し軽くなったようなそんな気がしたのでした。

最後に
正直言ってペース配分を間違えたと云うか?記事を書いている途中で「今回の項目の拾い出しは完全に失敗だった」とそう思いましたね。もうとにかく「ここも取り上げたかったのに」という箇所が大量に発生してしまいました。

「アーチのあるあの部屋だよ。みんな見えない所に隠れているだけなんだ。それだけだよ。あんたには聞えたんだ」

それにしても話はガラリと変わりますがルーナが第5巻の最後に言った「この言葉」は実は7巻でシリウスが違った形で再登場するという意味を含めた重要な伏線だったらしいとの事でした。だから最後に無理やり押し込みました。
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