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スネイプは上機嫌でした。自分の生涯でジェームズ・ポッターの次に大嫌いなシリウス・ブラックがついについに吸魂鬼に「キス」を施されて永久に葬り去られる時が来た。その上にマーリン勲章の勲一等も貰えそうだ。ところがその僅か10分後にはスネイプは逆上して病室に駆け込む事になってしまったのでした。(全3項目)

3-1.医務室にて
言語道断だ。あろう事か誰も死ななかったのは奇跡だ。こんな事は前代未聞で君が居合わせたのは幸運だった。魔法大臣コーネリウス・ファッジはスネイプを賛美する言葉を惜しみませんでした。そんな大臣にスネイプは・・・

「恐れ入ります。大臣閣下」

マーリン勲章の勲二等いや私が口やかましく言えば勲一等ものだ。こう言う魔法大臣にスネイプは「まことに有り難い事です。閣下」と言葉を返していました。さらにそのひどい切り傷はブラックの仕業だろうと言われて・・・

「実はポッター、ウィーズリー、グレンジャーの仕業です。閣下」

「まさか!」と驚く魔法大臣にスネイプは「ブラックが3人に魔法をかけたのです。我輩にはすぐ判りました。3人の行動から察しますに錯乱の呪文でしょうな。3人はブラックが無実である可能性があると考えていたようです」

さらにスネイプは「3人の行動に責任はありません。しかしながら3人が余計な事をしたためブラックを取り逃がしたかもしれないわけでありまして。3人は明らかに自分たちだけでブラックを捕まえようと思ったわけですな」

スネイプの説明は続きます「この3人はこれまでも色々と上手くやり遂せておりまして。どうも自分たちの力を過信している節があるようで。それにもちろんポッターの場合。校長が特別扱いで相当な自由を許して来ましたし」

「ああそれはスネイプ。何しろハリー・ポッターだ。我々は皆この子に関しては甘い所がある」まるでスネイプの演説に合いの手を入れるように魔法大臣のこの言葉が入りました。そのためスネイプの弁舌はさらに続きました。

「しかしそれにしましても。あまりの特別扱いは本人のためにならぬのでは?我輩個人的には他の生徒と同じように扱うよう心がけております。そこでですが他の生徒であれば停学でしょうな」

「少なくとも友人をあれほどの危険に巻き込んだのですから。閣下お考えください。校則の全てに違反ししかもポッターを護るためにあれだけの警戒措置が取られたにも関わらずですぞ。規則を破り夜間人狼と殺人者と連んで」

そして最後にスネイプは「それにポッターは規則を犯してホグズミードに出入りしていたと信じるに足る証拠を我輩は掴んでおります」と言ったのでした。そんなスネイプに魔法大臣コーネリウス・ファッジはこう言いました。

「まあまあスネイプ。いずれそのうち。またそのうち。あの子は確かに愚かではあった」

ハリーは吸魂鬼に取り囲まれたショックで目を開ける気力すらありません。一番驚かされたのが吸魂鬼の行動だった。どうして退却したのか本当に思い当たる節はないのかね?と訊く魔法大臣にスネイプはこう答えたのでした。

「ありません閣下。我輩の意識が戻った時には吸魂鬼は全員それぞれの持ち場に向かって校門に戻る所でした」

「全員我輩が追いついた時には意識不明でした。我輩は当然ブラックを縛り上げ猿ぐつわを噛ませ担架を作り出して全員をまっすぐ城まで連れて来ました」

「不思議千万だ。しかもブラックも。ハリーも。それにあの女の子も」と言う大臣にスネイプはこう答えました。ここで魔法大臣とスネイプの会話が途切れました。ハリーの頭はようやく少しだけ速く回転するようになりました。

そしてハリーは目を開けました。

すると?

3-2.ダンブルドアと
何もかもぼんやりしていました。誰かがハリーのメガネを外したのです。ハリーが枕の上で頭を動かすと右側のベッドにハーマイオニーがいてもう目を開けていました。ハリーは上半身を起こしメガネを掛け杖を取り上げました。

あなたたちは私が大丈夫だと言うまでここに入院と言っているのにハリーがそれを無視するかの如き事をしているのでマダム・ポンフリーはハリーに「何をしてるんですか?」と問いかけたのでした。その問いにハリーは・・・

「校長先生にお目にかかるんです」

するとマダム・ポンフリーはハリーをなだめるようにシリウスは捕まえて上の階に閉じ込められている。吸魂鬼がまもなく「キス」を施すから大丈夫だと言ったのでした。それを聞いてハリーは「えーっ!」と叫んだのでした。

ハリーはベッドから飛び降りました。ハーマイオニーも同じ事をしました。ハリーの叫び声が廊下まで聞こえたようで次の瞬間には魔法大臣コーネリウス・ファッジとスネイプが病室に入って来てファッジがこう言ったのでした。

「ハリー、ハリー、何事だね?寝てないといけないよ。ハリーにチョコレートをやったかね?」

ハリーとハーマイオニーは大臣にシリウス・ブラックは無実です。ピーター・ペティグリューは死んだと見せかけただけで生きている。ロンのネズミで「動物もどき」だったんだと必死に訴えました。ところがファッジは・・・

ファッジは微かに笑みさえ浮かべて首を振ると「君は混乱している。あんな恐ろしい試練を受けたのだし横になりなさい。全て我々が掌握している」と言ってハリーの訴えを真剣に聞こうとしてくれません。するとそこで・・・

「お判りでしょう。閣下?錯乱の呪文です。2人とも。ブラックは見事に2人に術をかけたものですな」

スネイプがこう言うのに対してハリーは大声で「僕たち錯乱してなんかいません!」と訴えました。するとマダム・ポンフリーが怒りました。私の患者のハリーを興奮させてはいけないので2人とも出て行ってくれと言うのです。

自分は興奮していない。何があったのかを2人に伝えようとしているんです。しかしマダム・ポンフリーは突然大きなチョコレートの塊をハリーの口に押し込むと問答無用とばかりに間髪を入れずにベッドに押し戻したのでした。

「さあ大臣お願いです。この子たちは手当てが必要です。どうか出て行ってください」

マダム・ポンフリーがこう言っていると再び扉が開いてダンブルドアが入って来ました。病室を一体何だと思っているんですか?そう言って怒るマダム・ポンフリーにダンブルドアはハリーとハーマイオニーに話があると・・・

「さぞかしポッターに吹き込んだと同じお伽噺をお聞かせした事でしょうな?ネズミが何だとか。ペティグリューが生きているとか」

たった今シリウス・ブラックと話をして来たと言うダンブルドアにスネイプは吐き捨てるようにこう言いました。それに対してダンブルドアは「さよう。ブラックの話はまさにそれじゃ」と答えたのでした。するとスネイプは?

「我輩の証言は何の重みもないという事で?」

さらに「ピーター・ペティグリューは叫びの屋敷にはいませんでしたぞ。校庭でも影も形もありませんでした」と言うスネイプにハーマイオニーが「それは先生がノックアウト状態だったからです!」と必死に訴えたのでした。

「先生は後から来たのでお聞きになっていない」と言うハーマイオニーにスネイプは「ミス・グレンジャー。口出しするな!」と言い返しました。するとファッジが驚いてなだめるように「まあまあスネイプ」と言ったのでした。

するとここで突然ダンブルドアが「わしはハリーとハーマイオニーと3人だけで話したいのじゃが」と言い出したのでした。だから魔法大臣とスネイプとマダム・ポンフリーには席を外して欲しいとそう言うのです。すると?

「事は急を要する。どうしてもじゃ」とダンブルドアが言うとマダム・ポンフリーは怒りつつも自分の事務室に引っ込んでくれました。魔法大臣は「そろそろ吸魂鬼が到着する頃だ」と言って病棟から出て行ってくれたのでした。

ファッジは病室の外でスネイプのために扉を開けて待っていました。しかしスネイプは動きませんでした。魔法大臣閣下様が扉を開けて待っているのにスネイプはダンブルドアを見据えたままで囁くようにこう言ったのでした。

「ブラックの話など一言も信じてはおられないでしょうな?」

こう言うスネイプにダンブルドアは「わしはハリーとハーマイオニーと3人だけで話したいのじゃ」と同じ言葉を繰り返しました。するとスネイプはダンブルドアのほうに一歩踏み出してこう言ったというわけなんですよね。

「シリウス・ブラックは16の時に既に人殺しの能力を露わにした。お忘れになってはいますまいな校長?ブラックはかつて我輩を殺そうとした事を忘れてはいますまい?」

それに対してダンブルドアは「セブルス。わしの記憶力はまだ衰えてはおらんよ」と静かに言いました。スネイプは身を反転させて魔法大臣コーネリウス・ファッジが開けて待っていた扉から肩をいからせて出て行ったのでした。

そしてそれはスネイプのほうは・・・

次の瞬間に起きたのです。

3-3.逆上するスネイプ
ハリーとハーマイオニーの2人は逆転時計で3時間前に戻りヒッポグリフのバックビークとシリウスを助けてからでした。そのため当然それから3時間が経過していました。しかしスネイプのほうは病室を出た次の瞬間の事でした。

マダム・ポンフリーが驚いて「何かしら?」と言って扉を見つめると怒声が聞こえて来ました。段々大きくなって来ます。ハリーは何を言っているのかを聞き取ろうとしました。まず最初に聞こえて来たのは魔法大臣の声でした。

「奴は断じて姿くらましをしたのではない!この城の中では姿くらましも姿現わしもできないのだ!これは断じて-何か-ポッターが-絡んでいる!」

きっと「姿くらまし」を使ったのだろう。誰か一緒に部屋に残しておくべきだったと言う魔法大臣にスネイプがこう吠えていました。それに対して魔法大臣は「落ち着け。ハリーは閉じ込められている」と言っていたのでした。

バーンという轟音と共に病室の扉が猛烈な勢いで開きました。魔法大臣コーネリウス・ファッジにスネイプとダンブルドアがつかつかと中に入って来ました。シリウスを逃がした影の首謀者のダンブルドアだけが涼しい顔でした。

「白状しろポッター!一体何をした?」

入って来るなりスネイプが逆上してこう吠えました。魔法大臣は怒っているようでした。そしてダンブルドアは涼しげなのはもちろんの事でむしろかなり楽しんでいるようにも見えました。そしてマダム・ポンフリーのほうは?

「スネイプ先生!場所をわきまえていただかないと!」

マダム・ポンフリーは金切り声でこう言いました。ファッジも無茶を言うな。扉には鍵が掛っていた。今見た通りだとスネイプに言ったのでした。しかしスネイプはハリーとハーマイオニーを指差してこう喚いていたのでした。

「こいつらが奴の逃亡に手を貸した。判っているぞ!」

スネイプは顔を歪ませ口角泡を飛ばして叫んでいました。スネイプが静まる気配を見せないので大臣は今度は大声で「いい加減に静まらんか!辻褄の合わん事を!」と言ったのでした。するとスネイプは声を上ずらせて・・・

「閣下はポッターをご存じない!こいつがやったんだ。判っている。こいつがやったんだ」

そんな怒りがちっとも収まらないスネイプに対してダンブルドアは「もう充分じゃろう。セブルス」と静かに言ったのでした。自分が何を言っているのか考えてみるがよい。自分が10分前に出た時からこの扉には鍵が掛っていた。

ダンブルドアはマダム・ポンフリーに「この子たちはベッドを離れたかね?」と訊いて「もちろん離れませんわ」と確認を取った上でスネイプに「ほーれセブルス。聞いての通りじゃ」と落ち着いて言った後こう言ったのでした。

「ハリーもハーマイオニーも同時に二ヵ所に存在する事ができるというのなら別じゃが。これ以上2人を煩わすのは何の意味もないと思うがの」

湯気が立つぐらい怒り心頭のスネイプはその場に棒立ちになり魔法大臣を睨み次にダンブルドアを睨みつけました。そしてくるりと背を向けると病室から嵐のように出て行ったのでした。そんなスネイプを見て魔法大臣は・・・

「あの男どうも精神不安定じゃないかね。私が君の立場ならダンブルドア目を離さないようにするがね」

こう言う大臣にダンブルドアは「いや不安定なのではない。ただひどく失望して打ちのめされておるだけじゃ」と静かに答えたのでした。スネイプにとってはシリウスを永久に葬り去る千載一遇のチャンスを逃してしまい・・・

どれだけ怒っても怒り足りないという所なんでしょうね。

最後に
スリザリン寮生とその出身者は「他人の失敗に乗じて自分が優位な立場につく」というのが得意技なんですよね。コーネリウス・ファッジもまたバーテミウス・クラウチ氏の失敗に乗じてまんまと魔法大臣の座に登り詰めました。

スネイプのマーリン勲章の勲一等もまたそうでした。死者を1人も出さずに事態を収拾できたのはハリーが逆転時計を使って3時間に戻り「守護霊の呪文」を使って自分自身を含めた全ての人々を助けたからだったんですよね。

だからこそダンブルドアが「そんな事は許さん」と措置を施しシリウスを逃がしたんですよね。それにしてもスネイプはハリーの事を「我輩個人的には他の生徒と同じように扱うよう心がけております」と大臣に言っていますね。

「同じ」ではありませんよね。よくもまあ魔法大臣閣下様にこんな真っ赤な嘘が言えるもんです。この時スネイプはとっても上機嫌だったので嘘も滑らかに言えたんでしょう。その報いも10分後に受けたというわけなんですよね。
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