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きちんとやりたい。魔法ではなくスコップはある?ドビーのために自分ができるのは何だろう?ハリーがドビーのためにした事は汗を流して魔法ではなく自分の手で墓穴を掘る事でした。下手でもいい。きれいじゃなくてもいい。ハリーがドビーのために最後にしたのは墓石に文字を刻む事でした。(全3項目)

3-1.ドビーの死
ダンブルドアの時と同様に悪夢に二度引き込まれる思いでした。ドビーはもはや呼び戻せない所に逝ってしまった。たとえそうと判ってはいてもハリーはドビーの名前を何度も呼び続けていました。しかし結局自分たちは・・・

暫くしてハリーは自分たちは正しい目的地に着いていた事を知りました。ひざまずいてドビーを覗き込んでいるハリーの周りにビルとフラーさらにはディーンとルーナが集まって来たからでした。ハリーは4人の顔を見て・・・

「ハーマイオニーは?ハーマイオニーはどこ?」

ハリーが突然思い出したようにこう訊くとビルが「ロンが家の中に連れて行ったよ。ハーマイオニーは大丈夫だ」と答えてくれました。ハリーは再びドビーを見つめると手を伸ばし胸に刺さった銀の小刀を抜き取ったのでした。

それから自分の上着をゆっくりと脱いで毛布を掛けるようにドビーを覆いました。ビルたちが話し合っている間ハリーは話し声だけを聞いていました。何を話し合い何を決めているのか?ハリーは全く興味が湧きませんでした。

ビルはドビーの埋葬について提案をしていました。ハリーは自分が何を言っているのかも分らないままに同意をしました。同意しながら小さな亡骸をじっと見下ろしたその時に傷痕が疼いて焼けるように痛み出すのを感じました。

長い望遠鏡を逆に覗いたようにヴォルデモートの姿が遠くに見えました。ハリーたちが去った後にマルフォイの館に残った人々を罰している姿でした。ヴォルデモートの怒りは極限に達する恐ろしいものでした。がしかし・・・

ドビーへの哀悼の念がその怒りを弱めハリーにとっては広大で静かな海のどこか遠い彼方で起っている嵐のように感じられたのでした。自分の心を完璧にコントロールあるいは制御して閉じる事ができるようになったのでした。

そしてハリーが言った言葉が・・・

「僕。きちんとやりたい」

「魔法ではなくスコップはある?」

3-2.自分の手で
それから暫くしてハリーは作業を始めました。ビルに示された庭の隅の茂みと茂みの間に墓穴を掘り始めました。ハリーは憤りのようなものをぶつけながら掘りました。魔法ではなく汗を流して自分の力で掘る事に意味がある。

その行為が自分たちの命を救ってくれたドビーへの供養に思えたのでした。傷痕が痛みましたがハリーは痛みを制しました。感じはしてもそれは自分とかけ離れたものでした。ついにハリーは心を制御する方法を身につけました。

ヴォルデモートに対して心を閉じる事ができるようになったのです。ダンブルドアがスネイプからハリーに学び取らせたいと願った閉心術を完璧に自分のものにする事ができました。シリウスの死の悲しみに胸が塞がれて・・・

他の事が考えられなかったハリーの心をヴォルデモートは乗っ取る事ができなかった。あの時と同様こうしてドビーを追悼する心にもヴォルデモートの想念は侵入できなかった。深い悲しみがヴォルデモートを締め出したのです。

ダンブルドアならもちろんそれを愛だと言っただろう。汗に悲しみを包み込み傷痕の痛みを撥ね退けてハリーは固く冷たい土を掘り続けました。ハリーはマルフォイの館で起った事を考え耳にした事を思い出していたのでした。

すると闇に花が咲くように徐々に色々な事が判って来ました。喪失感と恐れが妄執を吹き消していました。横面を張られて目が覚めたようなそんな気がしました。ハリーはさらに深く墓穴を掘りました。するとそこには・・・

ロンとディーンが戻って来ました。2人がもし「杖を使って完璧な墓を掘らないのは何故だ?」と訊いたらハリーはその答えを用意していました。でも答える必要はありませんでした。2人もスコップを手に降りて来たからです。

3人は十分な深さになるまで黙々と一緒に掘りました。ハリーはドビーが心地よくなるようにと上着ですっぽりと包み直しました。ロンは靴下を脱いでドビーの素足に履かせました。ディーンは毛糸の帽子を取り出して来ました。

ハリーがその帽子をドビーの頭に丁寧に被せました。ルーナが「目を閉じさせたほうがいい」と言って屈んでそっとドビーの瞼に指を触れ見開いたままのガラス玉のような眼を閉じました。そしてルーナは優しくこう言いました。

「ほーらドビーは眠っているみたい」

ハリーはドビーを墓穴に横たえ小さな手足を眠っているように整えました。そして穴から出て最後にもう一度小さな亡骸を見つめました。ダンブルドアの葬儀を思い出しハリーは「泣くまい」と必死に堪えました。すると・・・

ルーナがこう言うのです。

「あたし何か言うべきだと思う」

3-3.ドビーの葬儀
「あたし何か言うべきだと思う」ルーナがこう言い出したのは突然の事でした。そして「あたしから始めてもいい?」と言うとルーナはみんなが見守る中で粗っぽく掘った墓石の底に横たわっているドビーに語りかけたのでした。

「あたしを地下牢から救い出してくれてドビー本当にありがとう。そんなにいい人で勇敢なあなたが死んでしまうなんてとっても不公平だわ。あなたがあたしたちにしてくれた事をあたし決して忘れないもン」

「あなたが今。幸せだといいな」

言い終わるとルーナはロンを振り返りました。ロンは咳払いをしてくぐもった声で「うん。ドビーありがとう」と言いました。その次にディーンが「ありがとう」と呟きました。そしてハリーはゴクリと唾を飲みこう言いました。

「さようなら。ドビー」

これだけしか言えませんでした。それと言うのもルーナがハリーの言いたい事を全部言ってくれたからでした。ビルが杖を上げると墓穴の横の土が宙に浮き上がりきれいに穴に落ちて来て小さな赤みがかった塚ができたのでした。

「僕もう少しここにいるけどいいかな?」

みんな何やら呟きながらハリー1人をドビーのそばに残して家に戻って行きました。誰かが背中を優しく叩くのを感じました。ハリーがあたりを見回すと海が丸くした大きな白い石が幾つも花壇を縁取っているのに気づきました。

ハリーは一番大きそうな石を1つ取りドビーの眠っている塚の頭のあたりに枕のように置きました。そして2本の杖の中から1本を選び石の表面に深く文字を刻んだのでした。ハーマイオニーならもっと早くきれいにできただろう。

しかし墓を自分で掘りたかったようにドビーが眠る場所を自分で記しておきたかったのです。刻み終わった時。石にはこう記されていました。

自由なしもべ妖精ドビーここに眠る。

ハリーは暫く自分の手作りの墓を見下ろした後その場を離れたのでした。

最後に
第7巻「死の秘宝」ではマッド・アイ・ムーディを皮切りにフレッド・ウィーズリーにニンファドーラ・トンクスとリーマス・ルーピンさらにはコリン・クリービーと夥しい数のそれも主要登場人物が死亡してしまいましたよね。

他にもふくろうのヘドウィグにトンクスのお父さんのテッド・トンクス氏など多くの人が死亡しました。しかしそんな中でも私にとって群を抜いて断トツにその死の悲しみと衝撃が大きかったのは何と言ってもドビーでしたよね。

「どうしてだろう?何故だろう?」と思ったらそれはやはり突然の登場で不意を衝かれたという事に加え、死ぬ直前のドビーがそれはそれはかっこよかったからだったんでしょうね。ドビーの活躍にはまさに度肝を抜かれました。

せめてもの救いはドビーがこの世で一番好きなハリーに見送られてハリーの腕の中で死んだ事ですよね。
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