FC2ブログ
怒りに任せてプリベット通り4番地を飛び出したハリーはマグノリア・クレセント通りで低い石垣に腰を下ろしました。ところが「これからどうしよう?」とハリーが思案していると何やら視線を感じるのです。杖先に灯りを点してそれを確認しようとしているとそこに現れたのは何と三階建てのド派手な紫色のバスでした。(全3項目)

3-1.何やら妙な気配が
怒りに任せてプリベット通り4番地を出て来たハリーは幾つかの通りを過ぎてマグノリア・クレセント通りまで来ると低い石垣に腰を下ろしました。するとまだ収まらない憤りが全身を駆け巡り心臓が激しく鼓動していました。

しかし10分も経つと別の感情が湧き上がって来ました。最悪の八方塞がりだ。行くあてもない。もっと悪い事に今しがた本当に魔法を使ってしまった。つまりほとんど間違いなく自分はホグワーツを退校処分にされてしまうんだ。

「未成年魔法使いの制限事項令」をこれだけ真正面から破ってしまえば今この場に魔法省の役人が現れてもおかしくない。ハリーは身震いしてマグノリア・クレセント通りを端から端まで見回しました。一体どうなるんだろう?

逮捕されるのか?それとも魔法界の爪弾き者になるのか?ロンとハーマイオニーの事を思うとハリーはますます落ち込みました。罪人であろうとなかろうと2人なら自分を助けたいと思うだろう。味方になってくれるでしょうね。

でも今は2人とも外国にいます。ヘドウィグもいないので2人に連絡する事もできはしません。それに加えてハリーはマグルのお金を全く持っていませんでした。魔法界のお金ならトランクの奥に僅かばかり残されてはいました。

ただし・・・

ハリーはその手に握った杖を見ました。どうせもう追放の身になってしまったのだから。あと少し魔法を使ったって同じじゃないか。自分には父親の形見の「透明マント」がある。トランクに魔法をかけて軽くし箒に括りつける。

マントを被ってロンドンまで飛んで行き両親が残した遺産を引き出す。そして無法者としての人生を歩み出す。そう考えるだけでハリーはぞっとしました。しかしそんな事より今はいつまでもここに座っているわけにはいかない。

このままではマグルの警察に見咎められトランク一杯の呪文の教科書や箒を持って「こんな真夜中に何をしている?」と訊かれ説明に窮する事になってしまいます。ハリーは再びトランクを開け「透明マント」を探し始めました。

しかしまだ見つからない内にハリーは身を起こしました。そして周囲を見回し始めました。首筋が妙にチクチクする。誰かに見つめられているようなそんな気がする。しかし通りには誰もいません。次にハリーがした事とは?

ハリーは再びトランクの上に屈み込みました。しかしすぐに立ち上がりました。物音がしたわけではありません。ハリーはむしろ気配を感じました。ハリーの背後の垣根とガレージの間の狭い隙間に何者かが立っているのです。

ハリーは目を凝らして見つめました。動いてくれさえすれば判るのに。野良猫なのか?それとも何か別の物なのか?ハリーは何とかしてその正体を確かめようと「ルーモス!光よ!」と唱えると杖の先に灯りを点したのでした。

そこに見えたのは?

3-2.突然そこに現れ出でたのは?
杖灯りを頭上に高々と掲げてハリーがそこに見たのは大きな目を不気味に光らせた得体の知れない何か図体の大きなものでした。ハリーは思わず後退りしてトランクに足を取られ倒れる体を支えようとして片腕を伸ばしました。

弾みで杖が手を離れて飛びハリーは道路脇の排水溝に落ちました。ところがその時でした。耳を劈くようなバーンという音がしてハリーは急に目の眩むような明かりに照らされて目を覆いました。ハリーを照らし出したのは?

ハリーは叫び声を上げて転がり車道から歩道へ戻りました。するとたった今ハリーが倒れていたその場所に巨大なタイヤが一対ヘッドライトと共に停まるではありませんか。顔を上げると三階建ての派手な紫色のバスがあります。

フロントガラスの上には金文字で「夜の騎士(ナイト)バス」と書かれています。一瞬ハリーは打ち所が悪くておかしくなったのかと思いました。すると紫の制服を着た車掌が降りて来て闇に向かって大声でこう呼びかけました。

「ナイト・バスがお迎えに来ました。迷子の魔法使い魔女たちの緊急お助けバスです。杖腕を差し出せば参じます。ご乗車ください。そうすればどこなりとお望みの場所までお連れします。私はスタン・シャンパイク」

ところが「車掌として今夜」と言った所で車掌は突然黙りました。地面に座り込んでいるハリーを見つけたのです。ハリーは落とした杖を拾うと急いで立ち上がり車掌に近づきました。スタン・シャンパイクはまだ若い車掌でした。

ハリーとあまり年が違わずせいぜい18才か19才でにきびだらけの顔でした。スタンは職業口調を忘れてハリーに「そんなとこですっころがっていってぇ何してた?」と訊いて来ました。ハリーは「転んじゃって」と答えました。

「何でころんじまった?」と訊きながらスタンが鼻先で笑うのでハリーは「わざと転んだわけじゃないよ」と答えながら気を悪くしました。そこでハリーは突然自分がどうして転んだのかを思い出し慌てて後ろを振り返りました。

先ほど何かがいたガレージと石垣の間の路地をバスのヘッドライトが煌々と照らしていましたがもぬけの殻でした。スタンが「いってぇ何見てる?」と訊くのでハリーは「何か黒い大きなものがいたんだ」とそう答えたのでした。

「犬のような。でも小山のように」こう言うとハリーはスタンのほうに向き直りました。スタンは口を半開きにしていました。その目が額の傷痕のほうに移って行きました。あのハリー・ポッターだと気づかれてしまったのです。

「おでこ。それなんでぇ?」と訊くスタンにハリーは「何でもない」と答え前髪を撫でつけて傷痕を隠しました。今度はスタンが名前を訊いて来たのでハリーは「ネビル・ロングボトム」と答えました。そしてスタンに・・・

「それで、それでこのバスはどこにでも行くって君そう言った?」

スタンの気を逸らそうとハリーが急いでこう訊くとスタンは自慢げに「あいよ。お望みしでえ。土の上ならどこでもござれだ。水ん中じゃなーんもできねえが」と答えました。でもここでスタンは再び疑わしげにこう訊くのです。

「確かにこのバスを呼んだな。ちげえねぇよな?杖腕を突き出したな。ちげえねぇよな?」

二度も「ちげえねぇよな?」と言うスタンにハリーは「ああ」と短く答え料金を訊くとトランクから巾着を出してお金を払いました。乗ってみると中には座席がなくカーテンのかかった窓際に6台の真鍮製の寝台が並んでいます。

トランクをベッド下に押し込みながらスタンは低い声で「ここがおめえさんのだ」と言いました。運転席のすぐ後ろのベッドでした。運転手は肘掛椅子に座りハンドルを握っていました。スタンがハリーに運転手を紹介しました。

「こいつぁ運転手のアーニー・プラングだ。アーンこっちはネビル・ロングボトムだ」

アーニー・プラングは分厚いメガネを掛けた年配の魔法使いでハリーに向かって頭を下げて挨拶しました。ハリーは正体を見破られないように再び前髪を撫でつけベッドに腰掛けてハリーのナイト・バスの旅が始まったのでした。

3-3.夜の騎士(ナイト)バスの旅
スタンがアーニーの隣の肘掛椅子に掛けながら「アーン、バス出しな」と言うと再びバーンと物凄い音がしてハリーは反動でベッドに放り出され仰向けに倒れました。起き上がって窓の外を見ると全く違う通りを走っていました。

ハリーの呆気に取られた顔をスタンは愉快そうに眺めていました。ハリーが呼び出す前はここにいたのだそうです。ウェールズのあたりだそうです。こんなやかましい音を立てて走っているのにどうしてマグルは気づかないのか?

ハリーが「このバスの音。どうしてマグルには聞こえないの?」と訊くとスタンは軽蔑するように「マグル!」と言ったかと思うとまるではぐらかすかのようにしてまたしてもロンドン訛りの言葉でハリーにこう答えたのでした。

「ちゃーんと聞いてねえのさ。ちゃーんと見てもいねえ。なーんもひとーっつも気づかねえ」

どうやら企業秘密で内緒という事のようです。アーニーのハンドルさばきはどう見ても上手いとは言えません。頻繁に歩道に乗り上げています。ところが街灯や郵便ポストにゴミ箱などが飛び退いてくれて絶対衝突しないのです。

マダム・マーシという客が降りるのでアーンがブレーキを踏むと全てのベッドが30センチほど前につんのめりました。マダム・マーシはしっかり握り締めたハンカチを口元に当てて何やら危なかしげな足取りで降りて行きました。

ハリーは眠れませんでした。アーニーの運転がお世辞にも到底上手いとは言えないからというわけではありません。怒りが収まって気持ちが落ち着いて来てみると自分が残して来た深刻な状況を思って心配になって来たからです。

するとスタンが「日刊予言者新聞」を広げて読み始めました。一面記事に大きな写真があり長いもつれた髪の頬のこけた男がハリーを見てゆっくりと瞬きをしました。それは誕生日にハリーがテレビのニュースで見た男でした。

「この人!マグルのニュースで見たよ!」

ハリーは一瞬自分の悩みを忘れこう言いました。スタンは一面を見てクスクス笑うと頷きながら「シリウス・ブラックだ」と言いました。ハリーが再び呆気に取れられているのでスタンは今度は得意げなクスクス笑いをしました。

「ネビル。もっと新聞を読まねぇといけねぇよ」

新聞の一面を渡すとスタンはハリーにこう言ったのでした。

今日の最後に
実は私は暫くの間は杖腕を上げて「夜の騎士(ナイト)バス」を呼び出してくれたのはシリウスだとそう思っていました。ところが今回この場面を改めて読み返してシリウスは全く微動だにしていなかったという事を確認しました。

結局ナイト・バスを呼び出したのはハリーでした。杖先に灯りを点しそれを高々と掲げた事で結果としてハリーがナイト・バスを呼び出す事になったんですよね。つまりハリーがナイト・バスに乗れたのはシリウスのお陰だった。

そういう事だったんですよね。(笑)
Secret

TrackBackURL
→http://tokimekiboy.blog43.fc2.com/tb.php/1857-c3ce850f