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ハリーは懸命にスネイプを追いました。それは目の前で起きた出来事を受け入れるなんて到底できなかったからです。しかしスネイプもドラコ・マルフォイも逃げ遂せたその後にハグリッドの一言がハリーを現実に引き戻したのでした。(全3項目)

3-1.金縛りの呪文が解けて
屋上にいる死喰い人が残り1人になった時にハリーはもう体が動かせる事に気づきました。麻痺したまま防壁に寄り掛かっていたのは魔法のせいではなく恐怖とショックのせいだったのです。ハリーはスネイプを追ったのでした。

ダンブルドアの所へ行かなければならない。スネイプを捕らえなければならない。2人を一緒にすれば起きてしまった出来事を覆せるかもしれない。ダンブルドアが死ぬはずがない。何故ハリーはそのように思ったんでしょう?

スネイプを捕まえたからといってダンブルドアが生き返るはずがない。ハリーだって心の奥底では判っていたはずです。でもハリーは目の前で起きた事が到底受け入れられなかった。だからまだ何とかなると思いたかったのです。

「大したこたあねえ。この程度ならダンブルドアが直せる」

そんなハリーを現実に引き戻したのはハグリッドが言ったこの言葉でした。自分の小屋に放たれた火を消している時にハグリッドがハリーにこう言ったのです。この言葉を聞いた瞬間ハリーは胃に焼けるような痛みを感じました。

沈黙と静寂の中でハリーの心に恐怖が込み上げて来ました。ダンブルドアは死んだ。だからダンブルドアはもうハグリッドの小屋を直せない。ハリーは咳払いをしました。パニックと煙で喉は乾き切りカラカラになっていました。

スネイプが殺害した。ダンブルドアをスネイプが殺害した。ハグリッドもにわかには信じられないといった様子で「何を言っちょる?」とか「ダンブルドアがどうしたと?」などと訊いて来ました。ハリーは繰り返し言いました。

死んだんだ。スネイプが殺害した。ハグリッドは声を荒げ「何を言っちょる」と言いました。スネイプがダンブルドアを殺害した。馬鹿な。何でそんな事を言うんだと言ってハグリッドはハリーの言う事を信じようとはしません。

「みんな。何を見ちょるんだ?」

「芝生に横たわっているのはありゃ何だ?」

「ハリー見えるか?塔の真下だが?闇の印の下だ。まさか誰か上から放り投げられたんじゃあ?」

こう言うとハグリッドは黙り込みました。

3-2.目の前の現実
それはもう口に出すのさえ恐ろしい考えだったに違いありません。ハグリッドと並んで歩きながらハリーはこの半時間の間に受けた数々の呪いのせいで顔や両脚が痛むのを感じていました。しかしそれはとても奇妙な感覚でした。

まるでそばにいる別の人間が感じているようで他人事のようでした。ハリーとハグリッドは夢遊病者のように何かを呟く人々の中を通って一番前まで進みました。ぽっかり空いた空間を生徒や先生方が呆然と取り巻いていました。

ダンブルドアの亡骸を見てハグリッドの苦痛と衝撃に呻く声が聞こえて来ました。しかしハリーは立ち止まりませんでした。ゆっくりとダンブルドアが横たわっているそばまで進むとハリーはその傍らにうずくまったのでした。

ダンブルドアにかけられた「金縛りの術」が解けた時からハリーはもう望みがない事を知っていました。術者が死んだからこそ術が解けたに違いない。でもこうして骨が折れ横たわる姿を見る心の準備はできてはいませんでした。

これまでもそしてこれから先もハリーにとって最も偉大な魔法使いの姿がそこにありました。ダンブルドアは目を閉じていました。手足が不自然な方向を向いている事を除けば眠っているようでした。ハリーは手を伸ばしました。

半月メガネを鼻にかけ直し口から流れ出た一筋の血を自分の袖で拭いました。それからハリーは年齢を刻んだその聡明な顔をじっと見下ろして途方もない理解を超えた真実を何とか呑み込もうとして懸命の努力をしたのでした。

ダンブルドアはもう二度と自分に語りかける事も助ける事もない。それから長い時間が経ったような気がしましたが背後の人垣がざわめきました。そこでハリーはふと自分が何か固い物の上にひざまずいている事に気づきました。

見下ろすと何時間も前にダンブルドアと2人で手に入れたロケットがダンブルドアのポケットから落ちていました。おそらくは地面に落ちた衝撃でロケットの蓋が開いていました。拾い上げた時「何かがおかしい」と気づきました。

手の中でロケットを裏返すと「憂いの篩」で見たロケットほど大きくありません。何の刻印もありませんしスリザリンの印とされる「S」の飾り文字もありません。しかもその中には折り畳んだ羊皮紙の切れ端が入っていました。

闇の帝王へ
あなたがこれを読む頃には私はとうに死んでいるでしょう。
しかし私があなたの秘密を発見した事を知って欲しいのです。
本当の分霊箱は私が盗みました。できるだけ早く破壊するつもりです。
死に直面する私が望むのはあなたが手ごわい相手に見(まみ)えたその時に
もう一度死ぬべき存在となる事です。
R.A.B


ハリーは無意識にその羊皮紙を取り出して開き背後に灯った沢山の杖明かりに照らしてそれを読みました。この書付は何を意味するのか?ハリーにとってはどうでもいい事でした。ただ1つの事だけハリーにとっては重要でした。

これは分霊箱ではなかった。ダンブルドアは無駄にあの恐ろしい毒を飲み自らを弱めたのです。ハリーは羊皮紙を手の中で握りつぶしました。辛苦を舐めて手に入れたというのに!ハリーの目は涙で焼けるように熱くなりました。

3-3.医務室へ
ずっとここにいるわけにはいかない。だから行こうとハグリッドがいくら言ってもハリーは「嫌だ」と言ってダンブルドアのそばを離れようとはしませんでした。その時でした。別の声がハリーに「行きましょう」と言いました。

ハグリッドの手より小さくて暖かい手がハリーの手を包んで引き上げました。何故か不思議な事にハリーはほとんど何も考えず引かれるままにその手に従いました。城に向かう所でハリーはそれがジニーだと初めて気づきました。

ジニーは「医務室に行くのよ」と言いました。ハリーはそれに「怪我はしてない」と答えました。それはジニーが言うにはマクゴナガル先生の命令なのだそうです。ロンもハーマイオニーもルーピンもみんなそこにいるそうです。

ハリーが「他に誰が死んだの?」と訊くとジニーは「心配しないで。私たちは大丈夫」と答えました。でもマルフォイが誰かの死体を跨いだと言った。ジニーはこう答えました。ハリーはその声の響きに不吉なものを感じました。

「ビルを跨いだのよ。だけど大丈夫。生きてるわ」

「本当に?」と訊くハリーにジニーは「もちろん本当よ」と答えました。ただちょっとビルは面倒な事になっただけなんだそうです。それは狼人間のフェンリール・グレイバックに襲われたからだとジニーはそう答えたのでした。

どんな後遺症があるかはっきりとは分らない。つまりグレイバックは襲った時には変身していなかった。その他にはネビルが入院しているけどマダム・ポンフリーが完全に回復するだろうと言っていたとジニーは言ったのでした。

それからフリットウィック先生がノックアウトされたけどクラクラしているだけでレイブンクロー生の様子を見に行くと言い張っていたのだそうです。結局他に死んだのは味方の「死の呪い」を受けた死喰い人の1人だけだった。

こんな事を話している内に医務室に到着したのでした。

今日の最後に
分霊箱は偽物だった。ダンブルドアは無駄にあの恐ろしい毒を飲み自らを弱めた。ハリーはそう思いました。でもダンブルドアはそんな事は百も承知だったんですよね。ダンブルドアが倒れたあの時ハリーはパニック状態でした。

偽物の分霊箱を拾い上げたのはダンブルドアでした。それはハリーに分霊箱が偽物だという事を気づかせないためだったのです。何故ダンブルドアは洞窟で湖を渡る小舟を見つける事ができたのか?ハリーも驚愕をしていました。

その理由も含めて「何故分霊箱が偽物だと判っていたのか?」も明らかになるのは第7巻「死の秘宝」なんですよね。
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