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「君の父親も私のためにそうしたに違いない」シリウス・ブラックのこの言葉を聞いてハリーの胸は憎しみで煮えくり返りました。とこらがいざ自分の杖を取り戻したというのにハリーの杖腕は微動だにしません。何もできないでいる内にルーピン先生がやって来て・・・(全3項目)

3-1.そこにいたのは?
「あいつが犬なんだ。あいつは動物もどきなんだ」こう言うとロンはハリーの肩越しに背後を見つめました。ハリーが振り向くと影の中に立つ男がハリーとハーマイオニーが入って来た扉を閉めました。それが犬だった男でした。

汚れきった髪が肘まで垂れています。暗い落ち窪んだ眼窩の奥で目が光っているのが見えなければまるで死体が立っているかのようです。血の気のない皮膚が顔の骨に張りついていて髑髏のようでした。シリウス・ブラックです。

「エクスペリアームス!」

ロンの杖を2人に向けてシリウス・ブラックはしわがれた声でこう唱えました。ハリーとハーマイオニーの杖が2人の手から飛び出し高々と宙を飛んでシリウス・ブラックの手に収まりました。その目はハリーを見据えていました。

「君なら友を助けに来ると思った。君の父親も私のためにそうしたに違いない。君は勇敢だ。先生の助けを求めなかった。有り難い。そのほうがずっと事は楽だ」

「君の父親も私のためにそうしたに違いない」シリウス・ブラックのこの言葉がハリーにはまるで大声で叫んだかのように鳴り響きました。ハリーの胸は憎しみで煮えくり返り恐れの欠けらが入り込む余地すらなかったのでした。

杖を取り戻したい!生まれて初めてハリーは身を守るためにではなく攻撃のために杖が欲しいと思いました。我を忘れてハリーは身を乗り出しました。すると突然ハリーの両脇で何かが動いて二組の手がハリーを引き戻しました。

ロンとハーマイオニーがハリーを止めたのでした。ハリーを殺害したいのなら僕たちもという事になるぞ。激しい口調でこう言うロンにシリウス・ブラックは「座っていろ。足の怪我が余計ひどくなるぞ」と静かに言いました。

僕たち3人を殺害しなくてはならないと言った事が聞こえたのか?自分の事を思いやるような言葉に驚いたロンがこう問いかけるとシリウス・ブラックは前にも増して笑うと今夜はただ1人を殺害するとそう言い放ったのでした。

ロンとハーマイオニーの手を振り解こうとしながらハリーは「何故なんだ?」と訊きました。それはシリウス・ブラックがピーター・ペティグリューを殺害する際に12人ものマグルを道連れにしていたからに他なりませんでした。

こいつが僕の父さんと母さんを殺害したんだ!ハリーは大声を上げると渾身の力でロンとハーマイオニーの手を振り解きシリウス・ブラックに飛びかかったのでした。

3-2.できなかった!
魔法も自分が華奢で背の低い13才である事も相手が背の高い大人の男である事もハリーは忘れ果てていました。できるだけ酷く傷つけてやりたい。その思い一筋でした。その結果返り討ちで自分がどんなに傷ついたって構わない。

ハリーがそんな行動に打って出て来たのがショックだったのか?シリウス・ブラックは杖を上げるのが遅れました。ハリーは片手でシリウス・ブラックの手首を掴むと捻って杖先を逸らせてもう一方の手で横顔を殴りつけました。

シリウス・ブラックの持っていた3本の杖から火花が噴射し危うくハリーの顔を逸れましたが目も眩むような閃光が走りました。しかしハリーはそんな事はお構いなしに体の箇所など全く選ばずに手当たり次第殴り続けました。

さらにハーマイオニーも加勢してクルックシャンクスも乱闘に加わりました。自分の杖が床に転がっているのが見えたのでハリーは杖に飛びつきました。しかしクルックシャンクスが前脚の爪をハリーの腕に食い込ませたのです。

それをハリーが払い退けるとクルックシャンクスはハリーの杖に飛びつきました。ハリーは大声で「取るな!」と言ってクルックシャンクスめがけて蹴りを入れました。クルックシャンクスは脇に飛び退いていってしまいました。

ハリーは杖を引っつかみ振り向きました。そしてロンとハーマイオニーに向かって「どいてくれ!」と叫びました。ハーマイオニーは唇から血を流し息も絶え絶えに自分の杖とロンの杖を引ったくって急いで脇に避けたのでした。

シリウス・ブラックは壁の下のほうで伸びていました。ハリーが杖をまっすぐに自分の心臓に向けてゆっくりと近づいて来るのを見ていました。ハリーはシリウス・ブラックに馬乗りになるような位置で歩みを止めたのでした。

ハリーはシリウス・ブラックを見下ろしました。左目の周りが黒くあざになり鼻血を流していました。ハリーは声を少し震わせてシリウス・ブラックにお前は僕の両親を殺害したと言いました。しかし杖腕は微動だにしません。

シリウス・ブラックはハリーをじっと見上げると「否定はしない。しかし君が全てを知ったら」と静かに言いました。それを聞いてハリーは「全て?」と言いました。でもすぐに怒りの気持ちが込み上げて来てこう言いました。

「お前は僕の両親をヴォルデモートに売った。それだけ知れば沢山だ!」

しかしシリウス・ブラックは緊迫した声で「聞いてくれ。聞かないと君は後悔する。君には分っていないんだ」と言いました。ハリーはますます声を震わせて「お前が思っているより僕は沢山知っている」とそう言ったのでした。

お前はあの声を聞いた事がないんだ。ハリーがこう言ったのはハリーのお母さんがヴォルデモートに自分の命乞いをする時の声の事です。ところが双方が次の言葉を言わない内にクルックシャンクスがその間に割って入りました。

シリウス・ブラックの胸の上に陣取ったのです。シリウス・ブラックは「どけ」と呟くとクルックシャンクスを払い除けようとしました。けれどもクルックシャンクスはローブに爪を立てて決して動こうとはしなかったのでした。

それならそれでいい。クルックシャンクスも一緒にやってやる。ハリーは杖を構えました。やるなら今だ。今こそ父さん母さんの敵を取る時だ。そう自分に言い聞かせてもハリーは杖を構えたままその場に立ち尽くしていました。

すると新しい物音が聞こえて来ました。誰かが階下で動いています。ハーマイオニーが突然「ここよ!私たち上にいるわ。シリウス・ブラックよ。早く!」と叫んだのでした。ハリーは発作的に杖を握り締めるとこう思いました。

「やるんだ。今!」

しかしハリーは行動に出ませんでした。赤い火花が散って扉が勢いよく開くと蒼白な顔で杖を構えてルーピン先生が姿を現わしました。そして部屋の中の状況を見回して確かめた後に「エクスペリアームス!」と叫んだのでした。

ハリーの杖がまたしても手を離れて飛びハーマイオニーが持っていた2本の杖も飛びました。ルーピンは3本とも器用に捕まえシリウス・ブラックを見据えたまま部屋に入って来ました。とうとうやらなかった。弱気になったんだ。

シリウス・ブラックは吸魂鬼に引き渡されるのだろう。ところがそうはならなかったのです。

3-3.一体何を?
ハリーは一瞬ルーピンを見ました。何を言っているのか理解できませんでした。誰の事を話しているのだろう?その理由は口を開いたと思ったらルーピンが何故だか緊張した声で「シリウスあいつはどこだ?」と言ったからです。

ハリーはまたシリウス・ブラックのほうを見ました。シリウスは無表情でした。数秒間シリウスは全く動きませんでした。それからゆっくりと手を上げるとまっすぐにロンを指差しました。指されてロンも当惑しているようです。

「しかしそれなら何故今まで正体を現わさなかったんだ?もしかしたら」

こう言うとルーピンは突然目を見開きました。まるでシリウスを通り越して何かを見ているような他の誰にも見えないものを見ているようなそんな感じです。そしてルーピンはシリウスにこう問いかけたというわけなんですよね。

「もしかしたらあいつがそうだったのか。もしかしたら君はあいつと入れ替わりになったのか。私に何も言わずに?」

こう問われてシリウスはルーピンを見つめ続けながらゆっくりと頷いたのでした。ハリーはわけが分らず大声で「ルーピン先生。一体何が?」と訊きました。しかしそれ以上言葉を続ける事ができないような事が起きたのでした。

ルーピンは構えた杖を下ろし次の瞬間シリウスのほうに歩いて行って手を取って助け起しました。上に載っていたクルックシャンクスが床に転がり落ちました。そしてルーピンはまるで兄弟のようにシリウスを抱き締めたのです。

それを見てハーマイオニーが「何て事なの!」と叫びました。ルーピンはシリウスを離すとハーマイオニーを見ました。ハーマイオニーも突如として目の前で起きた事に怒りを募らせているようでした。そしてこの後の事でした。

シリウスとルーピンの口から衝撃の事実が語られました。ロンのペットのスキャバーズは実は「動物もどき」でその正体は世間ではシリウスに12人のマグルと共に殺害されたと思われていたピータ・ペティグリューだったのです。

ルーピンは狼人間だった。3人の親友とて自分が狼人間だと知ったらたちまち見捨ててしまうだろう。だからルーピンは月に一度姿を消す理由を色々と言い訳をしていたんだそうです。けれども3人は本当の事を悟ってしまった。

そこでハリーのお父さんジェームズ・ポッターとシリウスにピーター・ペティグリューの3人は未登録の「動物もどき」になった。それは狼人間は人に対してのみ危険なので動物としてルーピンと付き合ってくれたんだそうです。

そういう経緯でシリウスとピーター・ペティグリューは未登録の「動物もどき」になったというわけなんですよね。

今日の最後に
ハリーの両親ポッター夫妻の「秘密の守人」はシリウスではなくピーター・ペティグリューだった。つまり実際にハリーの両親ポッター夫妻を裏切りヴォルデモートに2人の居場所を教えたのはピーター・ペティグリューでした。

ところがペティグリューが2人の居場所を教えた事でヴォルデモートは凋落する事になってしまいました。そのためペティグリューは仲間の死喰い人の復讐を恐れネズミのスキャバーズとしてウィーズリー家に入り込んだのです。

シリウスは魔法大臣コーネリウス・ファッジがアズカバンに持って来た「日刊予言者新聞」にロンの肩に乗ったペティグリューを見つけてペティグリューがハリーの身近にいる事を知りました。だから脱獄をしたというわけです。

シリウスがアズカバンを脱獄したのはハリーの事を思っての事だった。ハリーはそんなシリウスの自分に対する思いを開心術で見抜いたというわけなんですよね。それがためにハリーはシリウスを攻撃する事ができませんでした。

ルーピンは突然目を見開いた。まるでシリウスを通り越して何かを見ているような他の誰にも見えないものを見ているようだった。当サイトではリーマス・ルーピンも開心術に長けていると指摘しています。これはその場面です。

まるでシリウスを通り越して何かを見ているような他の誰にも見えないものを見ているようだった。これはルーピンが開心術でシリウスの心を見通している所をハリーが開心術で見抜いている。そういう場面だというわけです。

つまりロンとハーマイオニーには決して出来ない芸当というわけです。ハリーが開心術に長けているからこそ感じる事ができるんですよね。
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