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アルバス・ダンブルドア「死の秘宝」編、その2(16)(52回シリーズ)

エレベーターで一旦ロンと運良く合流したもののまた別行動になってしまったためハリーは独力でハーマイオニーを助けに地下の法廷に向かいました。そこには吸魂鬼が沢山いてハリーが行った時にはちょうどロンが夫に成り済ましているカターモール夫人の尋問が始まる所でした。(全3項目)

3-1.法廷の中へ
聳え立つような黒い姿の吸魂鬼の中を歩くのは恐ろしいものでした。フードに隠された目のない顔がハリーの動きを追いました。どうやらハリーの存在を感じ取ったようでした。他の人とは異質な存在だからというわけです。

それはハリーがまだ望みを捨てず反発力を残しているからです。そうした者の存在を感じ取っているのです。その時突然凍りつくような沈黙に衝撃が走り左側に並ぶ地下室の扉の1つが開いて中から叫び声が響いて来ました。

「違う違う私は半純血だ。半純血なんだ。聞いてくれ!父は魔法使いだった。本当だ。調べてくれ。アーキー・アルダートンだ。有名な箒設計士だった。調べてくれ。お願いだ。手を離せ。手を離せ」

魔法で拡大された「これが最後の警告よ。抵抗すると吸魂鬼にキスさせますよ」と言うアンブリッジの猫撫で声が男の絶望の叫びを掻き消して響きました。男の叫びは静かになりましたが乾いた啜り泣きが廊下に響きました。

アンブリッジが「連れて行きなさい」と言うと法廷の入口に二体の吸魂鬼が現れました。腐りかけた瘡蓋だらけの手が気絶した様子の魔法使いの両腕を掴んでいました。吸魂鬼は男を連れて廊下を去って行ってしまいました。

後に残された暗闇が男の姿を飲み込みました。すると今度はアンブリッジはメアリー・カターモールを呼びました。小柄な女性が立ち上がりました。頭のてっぺんから足の先まで震え顔からはすっかり血の気が失せています。

吸魂鬼のそばを通り過ぎる時に女性が身震いするのが見えました。ハリーは本能的に動きました。何も計画をしていたわけではありません。女性が1人で法廷に入って行くのをハリーは見るに耐えられないとそう思ったのです。

扉が閉まりかけたその時ハリーは女性の後ろに従いて法廷に滑り込んで行きました。そこはかつて5年生の時にハリーが懲戒尋問の際に入ったのとは違う法廷でした。天井は同じくらいの高さでしたがもっと小さな法廷でした。

深井戸の底に閉じ込められたようで閉所恐怖症に襲われそうでした。

3-2.裁判官席へ
ここにはさらに多くの吸魂鬼がいてその場に凍りつくような霊気を発していました。顔のない歩哨のように高くなった裁判官席から一番遠い法廷の隅に立っていました。高欄の囲いの向こうにアンブリッジが座っていました。

そして片側にはヤックスリーがもう片側にはカターモール夫人と同じぐらい青白い顔をしたハーマイオニーが座っていました。さらに裁判官席の下には毛足の長い銀色の猫すなわち守護霊が往ったり来たりしていたのでした。

吸魂鬼の発する絶望感から検察側を守っているのは「それ」とハリーは気づきました。絶望を感じるべきなのは被告で原告ではないのです。アンブリッジが甘い滑らかな声で「座りなさい」とカターモール夫人に言いました。

カターモール夫人は高い席から見下ろす床の真ん中に1つだけ置かれた椅子によろよろと近寄りました。座った途端に椅子の肘掛け部分から鎖が出て来ると夫人を椅子に縛りつけました。アンブリッジは夫人にこう言いました。

「メアリー・エリザベス・カターモールですね?」

カターモール夫人は弱々しくこくりと頷きました。アンブリッジが「魔法ビル管理部のレジナルド・カターモールの妻ですね?」と訊くとカターモール夫人はわっと泣き出してこう訴えましたがアンブリッジは無視しました。

「夫がどこにいるのか分らないわ。ここで会うはずでしたのに!」

アンブリッジがメイジーにエリーとアルフレッド・カターモールの母親ですねと尋ねるとカターモール夫人は一層激しくしゃくり上げ「子供たちは怯えています。私が家に戻らないのじゃないかと思って」とそう答えました。

するとヤックスリーが「いい加減にしろ。穢れた血のガキなど我々の同情を誘うものではない」と吐き出すように言いました。その一方でカターモール夫人の啜り泣きが結果としてハリーを手助けしてくれる事になりました。

壇に上る階段にそっと近づこうとしていたハリーの足音を隠してくれたのです。猫の守護霊がパトロールしている場所を過ぎた途端にハリーは温度が変わるのを感じました。ここは暖かくて快適だとハリーはそう思いました。

この守護霊はアンブリッジのものに違いないともハリーは思いました。自分が作成に関与したいびつな法律を振りかざし本領を発揮できるこの上ない幸せを反映してアンブリッジの分身は光り輝いていたというわけですよね。

ハリーはゆっくりと慎重にアンブリッジとヤックスリーにハーマイオニーの座る裁判官席の後ろの列に回り込んでじりじりと進むとハーマイオニーの後ろに座りました。ハーマイオニーは驚いて飛び上がってしまうのでは?

ハリーはそう懸念しました。アンブリッジとヤックスリーに「耳塞ぎの呪文」をかけようとも思いましたが呪文を小声で呟いてもハーマイオニーを驚かせてしまうかもしれないとハリーがそう思った時の事だったんですよね。

アンブリッジが声を張り上げてカターモール夫人に呼びかけたのです。ハリーはその機会を捉えて「僕。君の後ろにいるよ」とハーマイオニーの耳に囁きました。ハリーの予想通りになりハーマイオニーは飛び上がりました。

そのはずみで尋問の記録に使うはずのインク壷を引っくり返す所でした。しかし幸いな事にはアンブリッジもヤックスリーもカターモール夫人に気を取られていて気付きませんでした。アンブリッジの尋問は続いていました。

3-3.高欄から身を乗り出すと
「カターモールさん。あなたが今日魔法省に到着した際にあなたから杖を取り上げました。22センチ桜材。芯はユニコーンのたてがみ。この説明が何の事か判りますか?」アンブリッジはカターモール夫人にこう訊きました。

カターモール夫人が袖で目を拭って頷くとアンブリッジは「この杖を魔女又は魔法使いの誰から奪ったのか教えてくれますか?」と訊きました。カターモール夫人は再びしゃくり上げ言葉を途切れがちにしてこう答えました。

私が奪った?いいえ誰からも奪ったりしませんわ。私は買ったのです。11才の時にその杖が私を選んだのです。こう答えるとカターモール夫人は前にも増して激しく泣きました。それを見てアンブリッジは笑っていました。

女の子のように小さな笑い声を上げたアンブリッジをハリーは殴りつけてやりたくなりました。ところがその時です。アンブリッジが自分の餌食をよく見ようとして高欄から身を乗り出すと同時に金色の物が前に揺れました。

ぶらりと宙にぶら下がったのは何とロケットでした。アンブリッジは肌身離さず持ち歩いていたのです。それを見たハーマイオニーは小さな叫び声を上げましたがアンブリッジもヤックスリーも気がつきはしませんでした。

相変わらず獲物に夢中だったので一切耳に入っていなかったのです。アンブリッジはカターモール夫人に「いいえ。そうは思わない事よ」と言いさらには杖は魔女と魔法使いしか選びませんとそう言い放ったというわけです。

「あなたは魔女ではないのよ。あなたに送った調査票へのお答えがここにあります。マファルダよこして頂戴」

アンブリッジは小さな手を差し出しました。ハーマイオニーはロケットを見た衝撃で手が震えていました。脇の椅子に崩れんばかりに積まれている文書の山をハーマイオニーはもたつく手で探りようやく取り出したのでした。

カターモール夫人の名前が書いてある羊皮紙の束でした。

今日の最後に
後にロンはハリーに時々苛立って堪らない時などダンブルドアが陰で笑っているのではと思う事がある。あるいはもしかしたらわざわざ事を難しくしたがっているだけじゃないかと思う時があるとそう言っているんですよね。

ダンブルドアは遺言書でロンには「灯消しライター」をハーマイオニーには「吟遊詩人ビードルの物語」の蔵書をそしてハリーにはクィディッチのデビュー戦で掴んだスニッチとグリフィンドールの剣を譲り渡しましたよね。

グリフィンドールの剣は魔法大臣ルーファス・スクリムジョールがハリーへの引き渡しを拒否しました。これらの遺贈品を見てもハリーたち3人が「どうしてこれを?」と疑問に思い贈られた意味が不明の物ばかりでしたね。

今回の件でもそうですよね。グリモールド・プレイス12番地にあってハリーたちも手にしていたロケットが実はヴォルデモートの分魂箱でそれがマンダンガス・フレッチャーからドローレス・アンブリッジの手に渡っていた。

そのためにご覧のようにハリーたちは半端ないほどの苦労を強いられているというわけなんですよね。

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