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僕たち逃げ遂せたんだ。ヴォルデモートが2階に上がって来て寝室を走って横切っているその時に「姿くらまし」をしたという際どさで逃れたハリーとハーマイオニーでしたがハリーのほうにはとてつもなく大きな代償が降り掛かって来ました。ハリーがそれを知ったのは数時間後の夜明け前の事でした。(全3項目)

3-1.ようやく気がついて
「僕たち逃げ遂せたんだ」こう言うハリーにハーマイオニーは「そうよ」と応えハリーが意識を失っている間の事の経緯を説明しました。ハリーをベッドに寝かせるのに「浮遊術」を使わなくてはならなかったんだそうです。

ハリーを持ち上げる事ができなかったからなのだそうです。それからハーマイオニーは言葉を濁しながらハリーはずっとあんまり具合が良くなかったとも言いました。ハーマイオニーの目の下には隈ができていたのでした。

手に小さなスポンジを持っているのが見えました。それでハリーの顔の汗を拭っていたのです。ハーマイオニーが「具合が悪かったの。とっても悪かったわ」と言葉を言い終えるとハリーはハーマイオニーにこう訊きました。

「逃げたのはどのくらい前?」

ハリーのこの問いにハーマイオニーは「何時間も前よ。今はもう夜明けだわ」と答えハリーは「それで僕はどうだったの?意識不明?」と続けて質問してハーマイオニーは言いにくそうにこう答えたというわけなんですよね。

「というわけでもないの。叫んだり。呻いたり。色々」

ハーマイオニーの言い方はハリーを不安にさせました。一体自分は何をしたんだ?ヴォルデモートのように呪いを叫んだのか?ベビーベッドの赤ん坊のように泣き喚いたのか?ハーマイオニーはハリーにこう言ったのでした。

「分魂箱をあなたから外せなかったわ。貼りついていたの。あなたの胸に。ご免なさい。痣が残ったわ。外すのに切断の呪文を使わなければならなかったの」

最後にハーマイオニーが「それに蛇があなたを噛んだけど傷をきれいにしてハナハッカを塗っておいたわ」と言ったのでハリーは着ていた汗まみれのTシャツを引っ張って中を覗くと確認をしてみたというわけなんですよね。

心臓の上に分魂箱が焼きつけた楕円形の赤痣がありました。腕には半分治りかけの噛み傷が見えます。ハーマイオニーのこの言葉でハリーは話題を変えたがっているのが判りました。この後ハリーは厳しい現実を知るのです。

3-2.事の経緯を説明して
ハリーが「分魂箱はどこに置いたの?」と訊くとハーマイオニーは「バッグの中よ。暫くは離しておくべきだと思うの」と答えました。ハリーは頭を枕に押しつけハーマイオニーのやつれた土気色の顔を見てこう言いました。

「ゴドリックの谷に行くべきじゃなかった。僕が悪かった。みんな僕のせいだ。ご免ねハーマイオニー」

これにハーマイオニーは「あなたのせいじゃないわ。私も行きたかったんですもの。ダンブルドアがあなたに渡そうと剣をあそこに置いたって本気でそう思ったの」と応えてハリーはハーマイオニーにこう言葉を返しました。

「うんまあね。2人とも間違っていた。そういう事だろ?」

すると今度はハーマイオニーのほうが立て続けに質問して来ました。何があったの?バチルダがあなたを2階に連れて行った後に何があったの?蛇がどこかに隠れていたの?急に現われてバチルダを殺害しあなたを襲ったの?

「違う。バチルダが蛇だった。というか蛇がバチルダだった。初めからずっと」

ハリーがこう答えるとハーマイオニーは「な-何ですって?」と言いました。ハリーは目を閉じました。バチルダの家の悪臭がまだ体に染みついているようで何もかも生々しく感じられました。さらにハリーはこう言いました。

「バチルダはだいぶ前に死んだに違いない。蛇は。蛇はバチルダの体の中にいた。例のあの人が蛇をゴドリックの谷に置いて待ち伏せさせたんだ。君が正しかったよ。あいつは僕が戻ると読んでいたんだ」

ハーマイオニーは「蛇がバチルダの中にいたですって?」と言いました。ハリーが目を開けるとハーマイオニーは今にも吐きそうな顔をしていました。そんなハーマイオニーにハリーはこう言ったというわけなんですよね。

「僕たちの予想もつかない魔法に出会うだろってルーピンが言ったね。あいつは君の前では話をしたくなかったんだ。蛇語だったから。全部蛇語だった。僕は気づかなかった。でも僕にはあいつの言う事が判ったんだ」

「僕たちが2階の部屋に入った時あいつは例のあの人と交信した。僕は頭の中でそれが判ったんだ。あの人が興奮して僕を捕まえておけって言ったのを感じたんだ。それから」

ハリーはここで一旦話すのを辞めバチルダの首から大蛇が現れる様子を思い出しました。ハーマイオニーに全てを詳しく話す必要はない。ハリーはそう思いバチルダの首から大蛇が現れたと説明するのは辞める事にしました。

「それからバチルダの姿が変わって蛇になって襲って来た」

ハリーはこう表現を変えて言いました。そして説明を続け大蛇は自分を殺害する予定ではなく「例のあの人」が来るまで自分を足止めする役割だったと説明しました。そして今になって思ったのはあの大蛇の事だったのです。

あの大蛇を仕留めていたなら。それならあれほどの犠牲を払っても行ったかいがあったのに。ハリーは自分が嫌になりベッドに起き上がって毛布を跳ね退けました。そんなハリーにハーマイオニーがこう言ったんですよね。

「ハリー駄目よ。寝てなくちゃ駄目!」

これにハリーは「君こそ眠る必要があるよ。気を悪くしないで欲しいけどひどい顔だ。僕は大丈夫。暫く見張りをするよ」と言うと最後に「僕の杖は?」と訊きました。ハーマイオニーは答えずにただハリーの顔を見ました。

「ハーマイオニー僕の杖はどこなの?」

ハリーが再びこう訊くとハーマイオニーは唇を噛んで目に涙を浮かべました。ハリーに一番して欲しくない質問だったのです。

3-3.柊と不死鳥の杖が
ハーマイオニーは「ハリー」と名前を言った後の言葉が続きません。ハリーが「僕の杖はどこなんだ?」と三度目に質問をするとハーマイオニーはベッドの脇に手を伸ばして杖を取り出して見せました。信じ難い光景でした。

柊と不死鳥の杖はほとんど2つに折れていました。不死鳥の羽根の一筋が細々と2つを繋いでいました。柊の木は完全に割れていました。ハリーは深手を負った生き物を扱うような手つきで柊と不死鳥の杖を受け取りました。

何をどうしていいか分りませんでした。言い知れない恐怖で全てがぼやけていました。それからハリーは杖をハーマイオニーに差し出して「お願いだ。直して」と言いました。しかしハーマイオニーはこう言ったのでした。

「ハリーできないと思うわ。こんな風に折れてしまって」

それでもなおハリーが「お願いだよハーマイオニーやってみて!」と言うとハーマイオニーは「レ-レパロ!直れ!」と唱えました。するとぶら下がっていた半分がくっつきました。ハリーは杖を構えると呪文を唱えました。

「ルーモス!光よ!」

杖は弱々しい光を放ちましたがやがて消えました。ハリーは杖をハーマイオニーに向けて「エクスペリアームス!」と唱えました。ハーマイオニーの杖はぴくりと動きましたが手を離れはしなかったというわけなんですよね。

しかも魔法をかけようとした杖は負担に耐え切れず再び2つに折れてしまいました。ハリーは愕然として杖を見つめました。目の前で起きた事が信じられませんでした。あれほど様々な場面を生き抜いた杖が折れてしまった。

「ハリーご免なさい。本当にご免なさい。私が壊したと思うの。逃げる時ほら蛇が私たちを襲って来たので爆発呪文をかけたの。それがあちこち撥ね返ってそれできっと。きっとそれが当たって」

ハリーは無意識に「事故だった」と答えました。頭が真っ白で何も考えられませんでした。そして「何とか。何とか修理する方法を見つけるよ」と言いましたがハーマイオニーは「それはできないと思うわ」と応えました。

ハーマイオニーは頬を涙で濡らしながら「覚えているかしら。ロンのこと?自動車の衝突であの人の杖が折れた時のこと?どうしても元通りにならなくて新しいのを買わなければならなかったわ」とそう言ったんですよね。

ハリーは誘拐されヴォルデモートの人質になっているオリバンダー翁の事や死んでしまったグレゴロビッチの事を思いました。どうすれば新しい杖が手に入るというのだろうと考えたのです。ハリーは平静な声を装いました。

「まあね。それじゃ今は君のを借りるよ。見張りをする間」

涙で顔を光らせながらハーマイオニーは自分の杖を渡しました。ハリーはベッドの脇に座っているハーマイオニーをそのままにしてそこから離れました。とにかくハリーはハーマイオニーから離れたいとそう思ったのでした。

今日の最後に
柊の木に不死鳥の尾羽根が芯に入ったこの杖はこれまで数々の窮地からハリーを救って来ました。3年生の時にはこの杖から牡鹿の守護霊を出して百体の吸魂鬼を追い払い名付け親のシリウスと自分自身を救ったりもしました。

4年生の時は復活直後のヴォルデモートと死闘を繰り広げました。杖の芯が同じ不死鳥のフォークスの尾羽根だったため杖が正常に作動せず「呪文逆戻し効果」でヴォルデモートが殺害した人々が現れるという事が起きました。

ハリーはヴォルデモートの杖から出て来た人々の助言と手助けで生きてホグワーツに帰る事ができました。そして17才になる直前にプリベット通り4番地を出た時にも一度はもう駄目だとそう思ったハリーを救ってくれました。

この杖が勝手に動いて金色の炎を噴き出しヴォルデモートがルシウス・マルフォイ氏から借り受けた杖を破壊したのです。この柊と不死鳥の杖はこうして何度もハリーの命を救って来ました。その杖をハリーは失ったのです。

とてつもなく半端ないほどの大きな大きな痛手でした。
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