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これも8月毎年恒例のシリーズ物で今日から「3週間・12回」に渡ってお届けする事にします。いつものようにハリーは夏休みはプリベット通り4番地に帰って来たのですがバーノン叔父さんとの関係は相変わらず最悪中の最悪というわけなんですよね。(全3項目)

3-1.花壇に寝転ぶハリー・ポッター
この夏一番の暑い日が暮れようとする中プリベット通りの角張った大きな家々をけだるい静けさが覆っていました。普段なら光り輝く車は家の前の路地で埃を被っていますしエメラルド色だった芝生は黄ばんでいたのでした。

日照りのせいでホースで散水をする事が禁止されたからです。車を洗い上げたり芝生を刈ったりする日頃の趣味を奪われたプリベット通りの住人は日蔭を求めて涼しい屋内に引きこもり窓を広々と開け放っていたんですよね。

窓を開け放っていたのは吹きもしない風を誘い込むためです。戸外に取り残されているのは十代の少年がただ1人で4番地の庭の花壇に仰向けに寝転んでいました。その少年は痩せて黒髪でメガネをかけていたというわけです。

その少年は短い間にぐんと背が伸びたようで少し具合の悪そうなやつれた顔をしていました。汚いジーンズはボロボロで色の褪せたTシャツはだぶだぶで加えてスニーカーの底は剥がれかけているという有り様だったのでした。

こんな恰好のハリー・ポッターをご近所がお気に召すはずはありません。何しろみすぼらしいのは法律で罰するべきだと連中は考えているのです。しかしこの日のハリー・ポッターは紫陽花の大きな茂みに隠されていました。

そのため道往く人の目には全く見えません。もし見つかるとすればバーノン叔父さんとペチュニア叔母さんが居間の窓から首を突き出し真下の花壇を見下ろした場合だけです。ここに寝転ぼうと思ったのはハリー自身でした。

色々考え合せるとここに隠れるというアイデアは我ながら天晴れとハリーはそう思いました。熱くて固い地面に寝転がるのは確かにあまり快適とは言えませんがここなら睨みつける誰かさんもいないというわけなんですよね。

その誰かさんは他にニュースが聞こえなくなるほどの音で歯噛みをしたり意地悪な質問をぶつけて来たりもします。何しろバーノン叔父さんとペチュニア叔母さんと一緒に居間でテレビを見ようとすると必ずそうなるのです。

ハリーのそんな思いが羽を生やして開け放たれた窓から飛び込んで行ったかのように突如としてバーノン叔父さんがこう言う声が聞こえて来たのでした。叔父さんはニュースを見たがるハリーの心理が理解できないようです。

「あいつめ割り込むのを辞めたようでよかったわい。ところであいつはどこにいるんだ?」

3-2.7時のニュースが始まって
叔父さんが最後にした「あいつはどこにいるんだ?」という問いかけに叔母さんはどうでもいいという口調で「知りませんわ。家の中にはいないわ」と答えました。すると叔父さんはウーッと唸った後にこう言ったのでした。

「ニュース番組を見てるだと。奴の本当の狙いを知りたいもんだ。まともな男の子供がニュースなんぞに興味を持つものか。ダドリーなんか世の中がどうなっているかこれっぽっちも知らん」

叔父さんによればダドリーは「おそらく首相の名前も知らんぞ」との事でした。そして続けて叔父さんは「いずれにせよだ。わしらのニュースにあの連中の事なぞ出て来るはずが」とも言いましたが叔母さんが止めました。

叔父さんが魔法界の事を言い出し始めたので叔母さんは「バーノン。シーッ!窓が開いてますよ!」と言って叔父さんに話を辞めさせました。叔父さんが「ああ。そうだな。すまん」と言って4番地は静かになったのでした。

朝食用のシリアルの「フルーツ・ン・ブラン」印のコマーシャルソングを聞きながらハリーはフィッグばあさんが通り過ぎるのを眺めていました。フィッグばあさんは近くのウィステリア通りに住む猫好きの変わり者でした。

1人で顔をしかめブツブツ呟いています。ハリーは茂みの陰に隠れていて本当に良かったと思いました。フィッグばあさんは最近道で会う毎にしつこく夕食に誘うのです。フィッグばあさんは角を曲がって見えなくなりました。

その時に叔父さんの声が再び窓から流れて来て「ダッダーは夕食にでも呼ばれて行ったのか?」と訊いて叔母さんが「ポルキスさんの所ですよ。あの子は良いお友達が沢山いて本当に人気者で」と愛おしげに答えたのでした。

ハリーは吹き出したいのをぐっと堪えました。ダーズリー夫妻は息子のダドリーの事になると呆れるほどに親馬鹿です。この夏休みの間ダドリー軍団の仲間に毎晩食事に招かれているなどという嘘を鵜呑みにして来たのです。

ダドリーは夕食に招かれてなどいません。毎晩ワルガキどもと一緒に公園で物を壊し街角でタバコを吸い通りがかりの車や子供たちに石をぶつけているんですよね。ハリーは夕方リトル・ウィンジングを歩き回っていました。

その時にそういう現場を目撃しています。夏休みに入ってからハリーは毎日のように通りをぶらぶら歩いて道端のゴミ箱から新聞を漁っていたのです。7時のニュースを告げるテーマ音楽が聞こえハリーの胃がざわめきました。

1ヵ月も待ったんだからきっと今夜に違いないとハリーは思いました。最初のニュースはスペインの空港バゲージ係のストが二週目に入り空港に足止めされた夏休みの旅行客の数がこれまでの最高を記録したという内容でした。

アナウンサーの言葉の切れ目で叔父さんが「そんな奴ら。わしなら一生涯シエスタをくれてやる」と牙を剥きました。ハリーにとってはどうでもいい事でした。外の花壇でハリーは胃の緊張が緩むのを感じていたんですよね。

何事か起こったのなら最初のニュースになっていたはずだ。死とか破壊とかのほうが足止めされた旅行客より重要だからです。ハリーはゆっくりフーッと息を吐き輝くような青空を見上げました。今年の夏は毎日同じでした。

緊張に期待に束の間の安堵感そしてまた緊張が募る。しかもそのたびに同じ疑問がますます強くなるのです。どうしてまだ何も起こらないのだろう。ハリーはさらにニュースに耳を傾けました。もしかしたらと思ったのです。

マグルには真相が掴めないような何か些細なヒントがあるかもしれない。謎の失踪事件とか奇妙な事故とかというわけです。しかし聞こえて来たのは南東部のかんばつのニュースで叔父さんは大声でこう言い放ったのでした。

「隣の奴に聞かせてやりたいもんだ!あいつめ朝の3時にスプリンクラーを回しくさって!」

その後はサレー州でヘリコプターが畑に墜落しそうになったニュースでした。そしてその次は何とかという有名な女優がこれまた有名な夫と離婚した話で叔母さんはこう言いつつも実は大変興味があったみたいなんですよね。

「こんな不潔なスキャンダルに誰が興味を持つものですか」

叔母さんは口ではフンと言っておきながらあらゆる雑誌でこの記事を執拗に読み漁っていたのでした。

3-3.バシッという音の直後に
空が燃えるような夕焼けになりハリーは眩しさに目を閉じました。アナウンサーが最後のニュースを読み上げました。それはセキセイインコのバンジー君は夏を涼しく過ごす新しい方法を見つけたという内容だったのでした。

バーンズリー町のパブ「ファイブ・フェザーズ」に飼われているバンジー君は水上スキーを覚えました。メアリー・ドーキンズ記者が取材したんだそうです。もはやハリーが「これだ」と思うニュースはないというわけです。

ハリーは目を開けるとそっと寝返りを打って腹這いになり窓の下から這い出す用意をしました。ところが数センチも動かない内に矢継ぎ早に色々な出来事が起りました。まず鉄砲でも撃ったようなバシッという音がしました。

その音は大きく眠たげな静寂を破って鳴り響きました。駐車中の車の下から猫が一匹飛び出して瞬時に姿をくらましました。4番地の居間からは悲鳴と悪態をつく喚き声と陶器の割れる音が聞こえて来たというわけですよね。

ハリーはその合図を待っていたかのように飛び起きて同時に刀を鞘から抜くようにジーンズのベルトから杖を引き抜きました。しかし立ち上がり切らない内に4番地の開いた窓に頭のてっぺんがぶつかってしまったのでした。

ガツーンと音がして叔母さんの悲鳴が一段と大きくなりました。ハリーは頭が真っ二つに割れたかと思いました。涙目でよろよろしながらハリーは音の出所を突き止めようと通りに目を凝らしました。しかしだったんですよね。

よろめきながら何とかまっすぐに立った途端に開け放った窓から巨大な手が2本伸びて来てハリーの首をがっちり締めました。叔父さんがハリーの耳元で「そいつをしまえ!すぐにだ!誰にも見られない内に!」と凄みました。

ハリーは「放して!」と喘ぎ2人は数秒間揉み合いました。ハリーは上げた杖を右手でしっかり握り締めたまま左手で叔父さんの指を引っ張りました。するとハリーの頭のてっぺんがひときわ激しく疼いたというわけですよね。

叔父さんは電気ショックを受けたかのようにギャッと叫んで手を離しました。何か目に見えないエネルギーがハリーの体から迸って叔父さんはハリーを掴んではいられなくなったようでした。ハリーは息を切らしていました。

そして紫陽花の茂みに前のめりに倒れましたが体勢を立て直して周りを見回しました。バシッという大きな音を立てた何ものかの気配は全くありませんでしたが近所のあちこちの窓からは顔が覗いていたというわけですよね。

ハリーは急いで杖をジーンズに突っ込み何食わぬ顔をしたのでした。

今日の最後に
改めてこの場面をこうして振り返ってみると色んな意味で焦れったいという感じがしますよね。ハリーがテレビのニュース番組を見ようとするとバーノン叔父さんがあの手この手で邪魔立てして来るというわけなんですよね。

ニュースが聞こえなくなるほどの音で歯噛みをしたり意地悪な質問をぶつけて来たり挙句の果てには「奴の本当の狙いを知りたいもんだ」などと言われてしまうんですよね。ハリーはただニュースを見たいだけなんですよね。

次にはこの夏休みになってからは近所のウィステリア通りに住む猫好きで変わり者のフィッグばあさんが道で出会うとハリーをしつこく夕食に誘うんだそうです。実はフィッグばあさんは不死鳥の騎士団のメンバーなのです。

だから誘いに応じて夕食を共にしていればフィッグばあさんの家で誰にも邪魔されずにテレビのニュース番組を見たり道端のゴミ箱から新聞を漁ったりしなくてもハリーは新聞を毎日読めたかもしれないというわけですよね。

さらにもう1つ焦れったいのは新聞を読み漁ったりテレビのニュース番組を見てもハリーの欲しい情報は決して手には入らないという事なんですよね。けれどもハリーを苛立たせていたのはこれらだけではなかったんですよね。

まだまだあるのです。
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