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廃墟になった製糸工場の名残の巨大な煙突がそそり立つスピナーズ・エンドという所に2人の魔女が姿を現わしました。ナルシッサが訪ねようとしている男の事をベラは信用できないと言いました。しかしナルシッサは闇の帝王は信用していらっしゃるとそう言って・・・(全3項目)

3-1.2人のフード姿が現れて
首相執務室の窓に垂れ込めていた冷たい霧はそこから何キロも離れた場所の汚れた川面にも漂っていました。草ぼうぼうでゴミの散らかった土手の間を縫うようにして暗い川が囁くように流れる他には物音もしませんでした。

廃墟になった製糸工場の名残の巨大な煙突が黒々と不吉にそそり立っていました。あわよくば丈高の草に埋もれているフィッシュ・アンド・チップスのおこぼれでも嗅ぎ当てたいと足音を忍ばせて土手を下るキツネがいます。

その痩せたキツネの他は生き物の気配もありません。その時です。ポンと軽い音がしてフードを被ったすらりとした姿が忽然と川辺に現れました。キツネはその場に凍りつきその不思議な現象をじっと油断なく見詰めました。

そのフード姿は暫くの間は方向を確かめている様子でしたがやがて軽やかに素早い足取りで草むらに長いマントを滑らせながら歩き出しました。そこに二度目の少し大きいポンという音と共にまたもやフード姿が現れました。

鋭い声の「お待ち!」に驚いてそれまで下草にぴたりと身を伏せていたキツネは隠れていた場所から飛び出して土手を駆け上がりました。緑の閃光が走ってキャンという鳴き声と共にキツネは川辺に落ちて絶命していました。

2人目の人影がキツネの亡骸を爪先で引っくり返して「ただのキツネか」と軽蔑したように言いました。それからその女は「闇祓いかと思えば」と言うと1人目のフード姿に向かって「シシーお待ち!」と言ったというわけです。

しかし2人目の女が追う獲物は一瞬立ち止まり振り返って閃光を見はしましたが今キツネが転がり落ちたばかりの土手を既に登り出していました。2人目の女が追いついて1人目の腕を掴みましたが1人目はそれを振り解きました。

「シシー-ナルシッサ-話を聞きなさい」
「帰ってベラ!」
「私の話を聞きなさい!」

3-2.スピナーズ・エンドの一番奥の家に
ナルシッサと呼ばれた女は「もう聞いたわ。もう決めたんだから。ほっといて頂戴!」と言うと土手を登り切りました。古い鉄柵が川と狭い石畳の道とを仕切っていました。2人目の女のベラもすぐに追いついたんですよね。

ナルシッサとベラは並んで通りの向こう側を見ました。荒れ果てたレンガ建ての家が闇の中にどんよりと暗い窓を見せて何列も並んで建っていました。ベラは蔑むような声でナルシッサに向かってこう訊いたというわけです。

「あいつはここに住んでいるのかい?ここに?マグルの掃き溜めに?我々のような身分の者でこんな所に足を踏み入れるのは私たちが最初だろうよ」

しかしナルシッサは聞いてはいませんでした。錆びた鉄柵の間をくぐり抜け既にもう通りの向こうへと急いでいました。そんなナルシッサにベラは「シシーお待ちったら!」と言うとマントをなびかせて後を追ったのでした。

ベラはナルシッサが家並の間の路地を駆け抜けてどれも同じような通りの2つ目に走り込むのを目撃しました。街灯が何本か壊れています。ナルシッサとベラは灯りと闇のモザイクの中を走りました。そしてだったんですよね。

獲物を追う追っ手のようにベラは角を曲がろうとしているナルシッサに追いつきました。今度は首尾よく腕を捕まえて後ろを振り向かせてナルシッサとベラは向かい合いました。2人はあの男についてこう言い合ったのでした。

「シシーやってはいけないよ。あいつは信用できない」
「闇の帝王は信用していらっしゃるわ。違う?」

ナルシッサに「違う?」と問われてベラは「闇の帝王は。きっと。間違っていらっしゃる」と喘ぎました。ベラはフードの下で眼を一瞬ギラリと光らせ自分とナルシッサだけかとあたりを見回しナルシッサにこう言いました。

「いずれにせよこの計画は誰にも漏らすなと言われているじゃないか。こんな事をすれば闇の帝王への裏切りに」

まだベラが言葉を言い終わらない内にナルシッサが「放してよベラ」と凄みました。そしてマントの下から杖を取り出して脅すようにしてベラの顔にと突きつけました。ナルシッサがそうするのを見てベラは笑ったのでした。

「シシー自分の姉に?あんたにはできやしない」
「できない事なんかもう何にもないわ!」

ナルシッサの声にはヒステリックな響きがありました。そして杖をナイフのように振り下ろしました。閃光が走りベラは火傷をしたかのようにして妹のナルシッサの腕を放すと「ナルシッサ!」と呼びかけたというわけです。

しかしナルシッサはもう突進していました。追跡者のベラは手をさすりながら今度は少し距離を置き再びナルシッサを追いました。レンガ建ての家の間の人の気配のない迷路をナルシッサとベラはさらに奥に入り込みました。

ナルシッサはスピナーズ・エンドという名の袋小路に入り先を急ぎました。あの聳え立つような製糸工場の煙突が巨大な人差し指が警告しているかのように通りの上に浮かんで見えます。ナルシッサの足音がこだましました。

それは板が打ち付けられた窓や石畳からでした。壊れた窓を通り過ぎるナルシッサの足音がこだましていました。ナルシッサは一番奥の家へと辿り着きました。1階の部屋のカーテンを通してちらちらと仄暗い灯りが見えました。

ベラが小声で悪態をつきながら追いついた時にはナルシッサは既にもう扉を叩いていました。少し息を切らして夜風に乗って運ばれて来るどぶ川の臭気を吸い込みながらナルシッサとベラは佇んで待ちました。するとでした。

暫くして扉の向こう側で何かが動く音が聞こえ僅かに扉が開きました。隙間からナルシッサとベラを見ている男の姿が細長く見えました。黒い長髪が土気色の顔と暗い眼の周りでカーテンのように分れていたというわけです。

3-3.到着した所は?
ナルシッサはフードを脱ぎました。蒼白な顔は暗闇の中で輝くほど白く長いブロンドの髪が背中に流れる様子はまるで溺死した人のように見えました。男は「ナルシッサ!」と名前を呼ぶと扉を少しだけ広く開けたのでした。

そのために明かりがナルシッサと姉のベラを照らしました。男が「これは何と驚きましたな!」と言うとナルシッサは声を低くして「セブルス。お話できるかしら?とても急ぐの」と言い男は「いやもちろん」と答えました。

セブルスと呼ばれた男は一歩下がってナルシッサを招き入れました。まだフードを被ったままの姉のベラは許しも請わずに後に続き男の前を通り過ぎながらぶっきらぼうに「スネイプ」とそう言ったというわけなんですよね。

男は「ベラトリックス」と応えました。ナルシッサとベラトリックスの背後でピシャリと扉を閉めながら唇の薄いセブルス・スネイプの口元に嘲るような笑いが浮かびました。入った所がすぐに小さな居間になっていました。

暗い独房のような部屋でした。壁はクッションではなく本でびっしりと覆われています。黒か茶色の革の背表紙が多くて擦り切れたソファに古い肘掛椅子とぐらぐらするテーブルがそこには置かれていたというわけですよね。

天井からぶら下がった蝋燭ランプの薄暗い明りの下にそれらの物は一塊になっていました。普段は人が住んでいないようなほったらかしの雰囲気が漂っていました。スネイプはナルシッサにソファを勧めたというわけですね。

ナルシッサはマントをはらりと脱いで打ち捨て座り込んで膝の上で組んだ震える白い手を見詰めました。ベラトリックスはもっとゆっくりとフードを下しました。妹のナルシッサとは全く対照的な姿形をしていたんですよね。

黒髪に厚ぼったい瞼にがっちりした顎。ナルシッサの背後に回ってそこに立つまでの間ベラトリックスはスネイプを凝視したまま目を離しませんでした。信用できない男からは目を離せないと言いたげだったというわけです。

今日の最後に
「シシーやってはいけないよ。あいつは信用できない」と言うベラトリックス・レストレンジに対してナルシッサは「闇の帝王は信用していらっしゃるわ。違う?」と反論しました。それにベラトリックスはこう答えました。

「闇の帝王は。きっと。間違っていらっしゃる」

しかしベラトリックスは言葉を途切れがちにして何だか遠慮がちという感じですよね。おそらくはベラトリックスはご主人様の闇の帝王ことヴォルデモートを非難するのは何だか大変申し訳ないという気持ちなんでしょうね。

そのベラトリックスが信用できないと言い張っていたのはセブルス・スネイプの事でした。ベラトリックスは家の中に入ってからは信用できない男からは目を離せないとばかりにスネイプを凝視して目を離しませんでしたね。

それはベラトリックスにはベラトリックスなりの理由と根拠があるというわけなんですよね。
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